建築的な発想でつくる結婚指輪

結婚指輪のデザイン コンセプト

結婚指輪を造形物として、どう建て付けていくか

造形する上で、最も念頭に置いているデザインコンセプトは、構造自体を設計すること

指輪の顔に相当する表面部分の模様をどうするかという事は極力排除し、土台をどう組み上げるかに注力する。骨組み作り。

かたちが、その造形物の構造上、取替え不可能な、全体を構成する要素になっているかどうかをデザインしています。

上にのっかる正面部分が、もし取替え可能ということなら、それは必然ではなく、装飾であり、小細工に陥ってしまう。

例えば面に対して1本の必要なセンターラインを引くとする。
これは中心線を強調すると同時に、そのラインを引かれた面の輪郭=キワを意識化させ、強調する。
輪郭の美しさを際立たせ、その全体像とラインは切っても切れない関係=相互に呼応する必然性が生まれる。

例えば、面に対して関係ない花や蝶の絵柄をあしらったとすれば、それは構造と呼応しない、削除可能な付け足し装飾であり、構造が物足りないから、ポイントでも付けて補おうとする弱さの現われでしかないと思う。

キズとテクスチュアの違い

構造と成りうる、支える要素として構成の一員としてそこに存在できているか、取り除いても成り立つものであるかの違い、不用意についてしまった汚れなのか、デザインの全体の方向を決定づける汚しなのかの違い。
それがキズに見えるのは、内容として機能していないから。キズではなく質感と感じられるためには、そのものを指す指標として表層を表現できているから。
ダイヤにキズが入ったか、それともラフダイヤモンドとして、自然の素朴さが愛されるざらついた質なのかは大きく違う。

結婚指輪 デザインとはみてくれの違うものを幾通りもあみだすことではない

デザインと見栄えと感覚
見栄えではなく、どういう必然性を持ってそこに存在しているかどうか。
モノの素材感とは身体的にとらえる、どう受け止めるかという感覚。
 デザインは形や色彩などの視覚と素材をもクローズアップさせる。
ひとは、モノという存在から受ける感覚、存在そのものが人に伝える感覚を大切だと感じ始めた。百聞は一見にしかずという、共生感覚、ともにそこにいることこそ、リアルな情報としてとらえられると言うこと。ただ単に眼で見ることということよりも、そこに居ること。
全身感覚でそれを感じ取ろうということ。デジタル技術の長けた世界だが、ヴァーチャルでは、肌で感じる生の情報を超えることはできない。
 自然の素材だけではない、チタン、ゴールド、樹脂、ガラスなどの素材の美しさは身体のすべての感覚で受け止めることのできる存在感の美しさなのである。
 
素材への回帰こそ、人としての根源的な感覚への回帰なのである。

シンプルとはミニマリズムの真髄 結婚指輪

シンプルがなぜ美しいのか。


あるがままの姿を尊び、手を入れない、加工、改変しない、自然そのものをよしとする美学というのが日本にはある。作り込む足し算の逆で、あえて引き算する。いかに壊さないか、いかに崩さないかである。基準となるのはゼロの座標=素の状態というような美意識。

西欧と日本
たとえばドレスメーキングはボディの曲線に沿って裁断して身体ぴったりに縫製するのに対し、和裁は反物を直角に少し裁断するだけである。洗い針というが、着物を洗濯する際には縫い目をほどき、仕立て直しという工程をとる。着物として組みあがる前のユニットとして、素の素材である反物の方に重きを置かれている。
 西洋から来たブーツも曲線で革を仕立てるのに対し、日本の下駄はフラットな板だったり、バッグに対して風呂敷は単なる四角い布。あくまでも物や身体に合わせたりしないのである。
日本料理も素材の味を大事にする。こねくり回して素材が何だったかわからなくなるまでマッシュしたり、ジューサーにかけてソースにする西洋料理とは違う。

究極のデザイン :ミニマリズム
 つまりは、シンプルな形態とは、豊かな素材感や質感、存在のそのものの必然性を大切にするがゆえに、形がシンプルになるのだ。素材で勝負できる分、枠のシルエットをいじると、素材が死んでしまうから。かえって、ごちゃごちゃしたかたちは邪魔になるのである。豊かな素材感にこだわるあまりに形態への意識が希薄になり、そのことから日本独自のシンプルな形態の文化が育ってきたのだと考えられる。
 素材は温かみや重みや表情など感じ取るもの。
そうしたモノ自体が持つ感情で勝負できるからこそ、ミニマリズムが生かされるのである。

メンズライクなデザインのユーモア と結婚指輪

キャラクターやモチーフをテーマとしたデザインが、メンズアクセサリーには多く登場している。

中世の鎧をモチーフとしたもの、古代ローマの騎士や兜や剣もペンダントのモチーフとされていたり、十字軍のイメージのクロスだったり。歴史上の人物が使っていたような歴史テーマ性がアクセサリーのデザインに使われることも。

結婚指輪のデザインにもモチーフの影響が見られることも。

指輪のデザインが陽の目を見る日

デザインした指輪が、構想からフォルムの具現化をはたし、実用して、人の手に渡り、指輪として愛用される喜びのほかに、こうして、ホームページを見て、これまでの経歴と作品群を見て、さらにユーザーが増え、デザインを提案してくださり、その指輪が進化してまた新たなユーザーのもとへ渡ることが、とても建設的でやりがいを感じます。デザインしたものを、新たに、存在意味をふくらましてくれる、インターネットの向こう側の視線に向けて、デザインを進化させ前進できればと思います。