同じに見えても作り手の気持ちの持ち方、考え方によって素材に対する向き合い方が反映されています。削り方ひとつにしても、カットや磨きに対してもこだわりが映し出されます。繊細さや大胆さがちいさなちいさな世界を構成しています。ですからあまり関心のないひとにとってみればどれも同じ輪っかでしかないでしょう。でも指輪のデザインに焦点を当ててじっくり覗いてみるとそこには人間と温かな金属との関係が開かれてゆくのです。
金属と人とのあいだにはとても壮大な歴史が積み上げられています。道具としての金属、装飾としての金属、ひとは金属をみつけ愛し、デザインを昇華してきました。ひとはひととのあいだにあって、社会が構成されますが、自分ひとりしかいなかったとしたらだれも装飾を身に着けるといった行動はとらないかもしれません。文化が花開いたのと深く関わってジュエリーデザインもまた、次々と生み出されていくのだと思います。
デザインとはいったい何かを考えるとき、人が人となりえるワケは、自己の中に他者を見出して、他者と共鳴するところからはじまったのではないかと思えます。他者の視線で自己を再発見することができて初めて自己意識が芽生えてきたのだと思えます。人が人間として行動する文明の中において、人らしく振る舞えるのは、他者を意識するところから行動の意図を自らデザインし、趣意書を組み立てそれに基づいて築き上げていく、デザインとはそうした設計図のような地図のようなものではないでしょうか。
地球上の生態系は生命を維持するためにさまざまな進化を遂げて今日に至っています。人は生命の進化によって地球に誕生してきました。俯瞰で見れば食物連鎖もそうですが、近視眼的に見れば微生物も捕食します。生体内ではマクロファージが異物をとらえ、自己と非自己を判別します。
地球上の生態系の中で、ヒトと他の生命の決定的な違いとは何でしょう?人は社会を意思を文明をデザインでき、手を使ってものを作り心を持ち行動し社会を発展させます。
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